かの子 23

2/12
193人が本棚に入れています
本棚に追加
/737ページ
長谷倉が上機嫌にかの子を車に乗せると、あっという間にマンションにたどり着いた。 車から降り、直通のエレベーターに乗る。 その間も、かの子の頭の中は、どうやって詐欺の話に持っていくかで一杯だった。 とにかく、西田の方法は分からないかもしれないけど、決算日の決め方とか、お金の行方だとか、他のメンバーの方法や情報、知っている人間がいるかどうか。 確認したい事は山ほどある。 エレベーターのドアが開き、長谷倉はかの子の背をそっと押した。 大人しくそれに従い、奥の方のドアから部屋に入る。 「で、かの子ちゃんは、何が聞きたいの?」 「え、あ、いろいろっていうか……始めたばかりで、何にも知らないので、他の方達がどうやっているのかとか、ご存知かなって……」 長谷倉はソファにかの子を座らせ、自分は使用頻度の極端に少ないであろうキッチンに立つ。 「んー……オレはさぁ、西田に全部任せてるけど、龍佑なんかは自分で全部指示出してるんじゃないかな。アイツ、全部自分がやらないと気が済まないタイプだから」 「そ、そうなんですか」 「あ、かの子ちゃん、ジュース、適当で良い?」 「すっ……すみません!あたしやります!」 急いで立ち上がろうとすると、長谷倉は笑いながら制止する。 「何言ってんの、かの子ちゃんはお客様。オレの仕事でしょ」 「――……はい……すみません……」 長谷倉は少ししてグラスを二つ持って、かの子の隣に座る。 「かの子ちゃんて、他のお嬢様と何か質が違うよね」 何気ない言葉に、かの子の体が固まった。 ヤバイ!疑われてる!? そんなかの子の緊張は、長谷倉には届かなかった。 「そういうトコ好きなんだよね。小百合や瑠璃華なんて、ふんぞり返って、周りがやるのが当たり前って顔してるからさー」 「そ……そんな事は……」 慌てて否定するが、長年の恨みが蓄積しているせいか、長谷倉は止まらない。 「大体、アイツ等は昔からそうなんだよ。人がやって当たり前。特別扱いされるのが当たり前。……だから、オレ達しか残んないんだよ」 「……仲が良いんですね……」 かの子の言葉に、長谷倉は心底嫌そうに眉を寄せた。 「違うね。オレ達は使用人と同じ。……龍佑はまだマシなんだけど、時々はそういう態度になるし」
/737ページ

最初のコメントを投稿しよう!