かの子 23

3/12
193人が本棚に入れています
本棚に追加
/737ページ
という事は、この場合リーダーは大坪龍佑、瑠璃華、そして従っているのが長谷倉、笹本、弓絵という構図になるのか。 かの子は頭の中でピラミッドを描く。 小百合はそうすると頂点になるという訳で……。 「でも、小百合さんは一緒にやらないんですか?」 「ああ、無理無理!オレ達、親のいる所でしかあの女に従わないから」 そう言って長谷倉はグラスを半分ほど空けた。 そして、苦々しく言い捨てる。 「あのお嬢様は、龍佑達よりも更にタチが悪いからね」 今までの経験を思い出しているのだろうか、長谷倉の口調が荒くなる。 「オレ達が楽しんでいるのを邪魔するのが趣味なんだよ、あの女は。今までどれだけ邪魔された事か……」 「そ……そんなに……ですか……」 「うん。まあ、いろいろあるから説明は無理なんだけど、オレ達、好き好んで小百合といる訳じゃないし」 それだけ言い放つと、長谷倉は残りのグラスを空け、キッチンに戻る。 かすかにアルコールの香りがする。 ……マズイ。酔われたら、聞き出すのが難しくなるかもしれない。 かの子は戻ってきた長谷倉のグラスをチラリと見やるが、並々注いである液体がどういう種類のものなのか、判別はつかなかった。 「あの……長谷倉さん達がもらうお金って、どこにしまっておくんですか?……ウチだと、誰かに見つかりそうなので……」 「ああ、その心配は無いよ」 そう言うと長谷倉は立ち上がって、ベッドルームらしき部屋に入っていく。 かの子もその後をついていき、促されるままにクローゼットの中の収納ケースの一つを見て、目を見張った。 「ほら、ここのケースにオレ達の稼ぎは全部入ってるんだよね。銀行とか面倒だし、オレのトコが一番簡単だから」 「そ……それ、どうするんですか?」 かの子の視線は、ケース一杯に無造作に詰め込まれた札束から動けなかった。 まるでおもちゃを投げ入れているかのように、乱雑に入っているそれは、かの子が今まで見た事も無いほどの量で。 一瞬、本物かどうかも分からないほどだった。 「……あの……いくら位あるんですか……?」 「え?数えてないから分からないよ。まあ、必要になったらそれぞれが持っていくからさ、オレ覚えてないんだよね」 あっけらかんと言う長谷倉に、かの子はめまいを覚えた。 何、この金銭感覚!?
/737ページ

最初のコメントを投稿しよう!