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という事は、この場合リーダーは大坪龍佑、瑠璃華、そして従っているのが長谷倉、笹本、弓絵という構図になるのか。
かの子は頭の中でピラミッドを描く。
小百合はそうすると頂点になるという訳で……。
「でも、小百合さんは一緒にやらないんですか?」
「ああ、無理無理!オレ達、親のいる所でしかあの女に従わないから」
そう言って長谷倉はグラスを半分ほど空けた。
そして、苦々しく言い捨てる。
「あのお嬢様は、龍佑達よりも更にタチが悪いからね」
今までの経験を思い出しているのだろうか、長谷倉の口調が荒くなる。
「オレ達が楽しんでいるのを邪魔するのが趣味なんだよ、あの女は。今までどれだけ邪魔された事か……」
「そ……そんなに……ですか……」
「うん。まあ、いろいろあるから説明は無理なんだけど、オレ達、好き好んで小百合といる訳じゃないし」
それだけ言い放つと、長谷倉は残りのグラスを空け、キッチンに戻る。
かすかにアルコールの香りがする。
……マズイ。酔われたら、聞き出すのが難しくなるかもしれない。
かの子は戻ってきた長谷倉のグラスをチラリと見やるが、並々注いである液体がどういう種類のものなのか、判別はつかなかった。
「あの……長谷倉さん達がもらうお金って、どこにしまっておくんですか?……ウチだと、誰かに見つかりそうなので……」
「ああ、その心配は無いよ」
そう言うと長谷倉は立ち上がって、ベッドルームらしき部屋に入っていく。
かの子もその後をついていき、促されるままにクローゼットの中の収納ケースの一つを見て、目を見張った。
「ほら、ここのケースにオレ達の稼ぎは全部入ってるんだよね。銀行とか面倒だし、オレのトコが一番簡単だから」
「そ……それ、どうするんですか?」
かの子の視線は、ケース一杯に無造作に詰め込まれた札束から動けなかった。
まるでおもちゃを投げ入れているかのように、乱雑に入っているそれは、かの子が今まで見た事も無いほどの量で。
一瞬、本物かどうかも分からないほどだった。
「……あの……いくら位あるんですか……?」
「え?数えてないから分からないよ。まあ、必要になったらそれぞれが持っていくからさ、オレ覚えてないんだよね」
あっけらかんと言う長谷倉に、かの子はめまいを覚えた。
何、この金銭感覚!?
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