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呆然としていて、かの子は長谷倉の口元が上がったのに気がつかなかった。
不意に腕を引かれると、広すぎるベッドに放り投げられた。
スプリングで体が跳ねるが、それを長谷倉は上から押さえつける。
「え、あの……」
「ね、そろそろおしゃべりはいいかな」
「え?」
そう言って長谷倉は、すぐにかの子の唇を自分のそれでふさぐ。
いつまでたっても慣れないそれに、かの子の眉が無意識に寄った。
だんだんと絡まる舌からアルコールの味がして、かの子は思わず長谷倉を押し返そうとしたが、その腕は一つにまとめ上げられ、押さえつけられた。
「かの子ちゃんさ、オレがいつも平然と我慢してるとか思ってないよね?」
「え」
離された唇はすぐにふさがれ、片手はかの子の上半身をはい回る。
背筋がゾワリとし、かの子はあがいたが、やはり自分よりも大きい長谷倉からは逃れられない。
「もう、ちょうどいいから、やっちゃおっか」
「――……っ……!!」
どういう事!?
かの子の頭の中は瞬時にパニックになる。
え、ちょっと、待って。
嘘。嘘。
あたし、このまま……?
ワンピースはあっさりと下げられ、捲りあげられたカットソーはすぐに脱がされた。
今、長谷倉の目の前には下着姿の自分だ。
「や……っ……!!嫌!長谷倉さん!!」
恥ずかしすぎて気絶しそうだが、かの子は必死になって長谷倉を制止しようと声を上げた。
だが、その声は届く事はなく、首筋や鎖骨に今までとは比べものにならないほどの赤が押される。
嫌だ、離して、気持ち悪い!
その叫びは長谷倉の唇に絡めとられ、息をするのも難しくなるほどに、深く口づけられる。
「嫌がる娘の相手するのって初めてで、新鮮だな」
悦に入りながら、長谷倉はかの子の下着を取り去る。
やめて。お願い。
嫌悪を通り越し、既に恐怖を感じた。
あたし、馬鹿だ。
こんな事になって、ようやく南條や悠司さんが言ってた意味が分かったなんて。
こぼれていく涙は長谷倉に吸い取られる。
かの子の意志は、既に完全無視だ。
それでももがき続けるかの子に、長谷倉は舌打ちする。
「何か、このままじゃオレ、無理強いしてるみたいじゃん。かの子ちゃんも、そろそろあきらめよ?」
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