かの子 23

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首を思い切り横に振る。 それが気に入らなかったのか、長谷倉はかの子の両の胸をわしづかみにした。 「きゃあっ!!」 誰も触れる事のなかったそこに乱暴に触れられ、かの子の意識はついに飛び去った。 "あっちの世界"へ。 「……?かの子ちゃん……?」 自分が自分で無いような感覚。聞こえているのに、返事もできない。 いぶかし気にのぞき込む長谷倉に、かの子からの言葉は何一つ無かった。 そこで長谷倉はようやく異常に気がついたらしく、かの子から離れ、その視線はかの子の腕で止まった。 ああ、見られちゃった……。 近しい人間にだって、自分からは決して見せようとしなかったそれは、図らずも嫌悪している人間に見られてしまった。 「……かの子ちゃん……大丈夫……?」 大丈夫なら、こんな事にはなっていない。 そう言いたかったが、言葉は出てこない。 視線を動かす事もなく、その裸体を隠す事もなく、ただ見上げているかの子が心配になったのだろうが、長谷倉はおろおろするばかりだ。 ああ、どうしようかな……。 ここには南條はいない。 この状態を頼れるのは南條だけなのに……。 「何だよ、コレ。どうなってんだ?!ねえ、かの子ちゃん!?」 辛うじてそばに脱ぎ去っていたかの子の服をかけながら、長谷倉は何とかかの子の反応を見ようと必死だ。 「聞こえてる!?どこか悪いの、かの子ちゃん!」 長谷倉は一旦息を吐くと、スマホを取り出し、電話をかけた。 「あ、西田!?ちょっと来てくれねぇ?マズイ事になってるみたいなんだけどさ」 立ち上がった長谷倉は、かの子をそのままにして、部屋を出た。 今、西田って言ったよね……。 そうだ。あたし、自分の事でいっぱいいっぱいになってる場合じゃない。 西田が来るのなら、それこそ次の詐欺がいつだとか、手段とか、実行するメンバーとか聞き出さないと……。 じゃないと、あたしはただの役立たずだ。 かの子は外をさまよっていた意識を力づくで手繰り寄せ、深呼吸した。 手を握り、そして開く。 息を大きく吐くと、ゆっくりと起き上がった。 ……うん。何とか戻れた……。 スルリと体から落ちた服を慌てて引き留め、かの子は部屋を見渡した。
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