かの子 23

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――……何で自分の服着るのに、アンタの許可がいるのよ……。 かの子はムスリとしながらも、投げ捨てられていた下着を拾い上げた。 そして、自分の裸身を見下ろしてため息をついた。 ……けど、こんな貧相な体見て、よくそんな気分になれるモンだね……。 まあ、アイツにとっては、女なら誰だっていいのかもしれない。 ただ、歴代の女達と比べられると、かの子は少しだけ悲しかった。 発達途中の体と、成熟した女の体。比較にもならない。 ……不意に浮かんだのは、南條と一緒にいた長身の女性。 モデルでも通用しそうなそのスタイルは、かの子の劣等感を増長するには十分すぎるほどだ。 以前、南條に風呂に乗り込まれた時に言い合いになったが、今なら分かる。 あんな体の女と一緒にいるんなら、あたしなんて、何の感情も湧かないんだろう。 かの子は首を軽く振り、そんなとりとめない思いを振り払った。 着替え終わり、部屋から出ると、長谷倉はワインのボトルを半分以上空けていた。 ……ちょっと待って。コレ大丈夫なペースなの? 思わず身構えてしまったかの子に気がつき、長谷倉は顔を上げた。 「あ、ごめんね。……ちょっとヤケ酒」 「すみません……」 「ああ、違う違う。……何て言うか、自分が嫌になったっていうか」 かの子がその返しに不思議そうに長谷倉を見る。 「かの子ちゃんの事、ちゃんと好きなのに、いっつも嫌がる事しかしてないなーって。……ごめんね」 そう言って、グラスをあおる長谷倉は、なぜか淋しそうに見えた。 「……お迎えの人って来られる?オレ、酒入れちゃったから送れないし」 「あ、き、聞いてみます……」 かの子がバッグからスマホを取り出そうとすると、不意にインターフォンが鳴った。 長谷倉は億劫そうに立ち上がると、通話ボタンを押す。 「はいー?」 『こちらに北大路かの子がお伺いしているかと思うのですが』 …………南條!? かの子は思わず声を上げそうになり、慌てて両手で口をふさぐ。 「ああ、ちょうど良かった。オレ、今酒入ってるからさ、連れて行ってくれる?」 『――……分かりました。エントランスで待っておりますので』 通話を終えると、長谷倉はかの子を素直に送り出す。
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