かの子 23

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「エレベーター、こっちがエントランスの方につながってるからさ」 そう言って、来た時のエレベーターの隣を指さした。 「……分かりました。……今日は本当にすみませんでした」 かの子が頭を下げると、長谷倉は珍しく殊勝な顔で、否定をした。 「ううん、オレが悪かったんだよ。……本当、ごめん」 それでも視線をそらそうとしないので、かの子は本当に反省をしてると見て、もう一度頭を下げた。 「いいえ。あたしも悪かったんです。……あの……もう、会えないですか?」 「そんな事ないよ。もちろん、連絡するから。……かの子ちゃんの準備ができるの待ってるからさ」 良かった。何とか情報源は失わずに済んだ。 かの子は一礼をして、エレベーターに乗り込む。 十秒もかからずに到着すると、ポン、と無機質な音が響き、ドアが開く。 かの子が下り立つと、目の前のガラス扉の向こうに、南條が待っていた。 その瞬間、かの子の中の張りつめていた糸が、プチンと音を立てて切れた。 かの子は駆け出すと、扉が自動で開くのを無理矢理手で開け、そのままの勢いで南條に飛びついた。 「嬢ちゃん!?」 南條の慌てた声に、かの子の涙腺は完全に崩壊した。 泣き出したかの子を南條は離そうとせず、更に抱き寄せた。 それだけで、かの子の心は落ち着きを取り戻す。 どれだけそうしていたのだろう。髪を撫でていた南條が、気まずそうにつぶやいた。 「……大丈夫……じゃねぇよな……」 しゃくりあげながら、それでもかの子は南條から離れられなかった。 今はただ、こうしていたかった。 「……嬢ちゃん……前も言ったけど、キツかったらやめていいんだからな」 その言葉は、聞こえないふりをした。 大丈夫だ。まだ、やれる。 あたしは人殺しだから。自分のわがままで、みんなを傷つけたんだから。 だから、償わなければならない。 かの子はようやく泣き止むと、気まずくなってしまい、南條から離れようとしたが、逆に抱き込められて、それはかなわなかった。 「南條……?」 「…………強がるな……。……オレがいるから……」 「…………うん……」 素直にうなづいてしまったが、かの子は南條の腕から逃れた。 「嬢ちゃん?」 忘れちゃいけない。あたしは悠司さんの彼女だ。
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