かの子 23

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刺々しい声色で返され、かの子はビクリとする。 だが、ここでひるんじゃダメだ。 悪いのはあたしなんだから。 かの子は、そのまま思い切ってドアを開けると、再び頭を下げた。 「……あたし……裕美さんがあんな風になってしまって……早く事件解決したいって思って……それで、長谷倉から……」 無言のままの塩原に、かの子は頭を下げたままだ。 ――……やっぱり、ダメかな……。 本当に愛想が尽きたんだろうな……。 徐々に涙があふれてくるが、かの子はこらえる。 あたしが泣いてどうする。 何度も何度も辛い思いをしているのは、悠司さんじゃない。 「――……あのさ……。……俺、そんなに頼りない?」 「え?」 不意打ちの質問に、かの子は涙目のまま顔を上げる。 塩原は顔だけをかの子に向け、そう尋ねた。 「俺は、かのちゃんの何なのかな」 塩原の質問が、かの子の心に突き刺さった。 ――……ああ、そうか。 ようやく、塩原が引っかかっていたものに気がついた。 あたしのせい。 あたしが、南條にばかり寄りかかっているから。 ――……なら、自分にできる事は一つだ。 かの子は口を開きかけ、躊躇する。それを数回繰り返す。 だが、意を決して塩原の元に直進し、ぶつかるように抱き着いた。 「……かのちゃん?」 「――……ごめんなさい。あたしのせいで、悠司さん傷つけて……」 何かを言いたそうにしていた塩原が口を開く前に、かの子は塩原の唇に触れた。 目を見開く塩原に構わず、つたないながらも、かの子の唇は何度も離れては触れる。 「――……かのちゃん……」 わずかにできた空間で、塩原は息を吸い込み、かの子を呼ぶ。 涙目のまま、首元に抱き着くかの子を、塩原はようやく抱き留めてくれた。 一旦息を吐くと、かの子は宣言するように言った。 もう、戻れない。 一瞬だけ南條の姿が浮かんで、消えた。 「あたし、悠司さんが好き」 「え」 「こうやってキスできるのは、悠司さんだけだもん。……これって、好きって事で良いんだよね?」 あまりに不意打ちの告白に、塩原は固まる。 その反応に、かの子は不安そうにのぞき込んだ。 「……もう、遅い……?」 塩原はゆっくりと首を横に振った。
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