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かの子を自宅マンションへ送った後、再び聡子の指示で西潟の張り込みに向かった。
今現在、二課のメンバーが交代で張っているという。
場所はまだ大学の中で、一度も出てきていないらしい。
「おう、こっちだ、南條」
車を大学の駐車場に停め、正門の辺りをうろついていたら、永桶が声をかけてきた。
「お疲れ様です。状況は」
「まったく動きは無し。寝てるんじゃないかと思うぞ、下手すると」
苦笑いして返す南條を、永桶は気まずそうにのぞき込んだ。
「それより、捕り物があったんだってな。お嬢ちゃんの方で」
「……ご存知でしたか」
「ああ、係長からさっき連絡があった。無事か?」
誰が、とは言わないのは暗黙の了解だ。
「――……多少影響はあるかもしれませんが、まだ大丈夫じゃないでしょうか」
すると、永桶は大きく息をついた。
何かと気にかけてもらえるかの子を、少しだけ恨めしく思う。
おい、嬢ちゃん。頼むから皆の寿命を縮める真似はやめてくれよな。
だが、南條の願いは、かの子には届く事は無かった。
塩原からの着信があったのは、それから数時間後。
未だに西潟の方には動きは無かった。
時折、他の人間が建物を出入りするものの、西潟の姿は見えない。
永桶に目でうかがうと、うなづいたので振動を続ける電話に出た。
すると、かの子からの定時連絡が無い上に、連絡が取れないとの事。
南條には嫌な予感しか無かった。
「――……またか」
『…………思いたくは無いンスけど、可能性は十分すぎます。東裕美の方に触発されて、長谷倉に会っているんじゃ……』
南條は塩原に長谷倉の自宅を教えてもらうと、すぐに永桶に許可をもらい車を出す。
――……どうして、嫌な予感ほど当たるんだよ!
できる限りのスピードで長谷倉の自宅マンションにたどり着くと、エントランスにあるインターフォンで、メールにあった部屋番号を押す。
少し間があり、返答したのは長谷倉の声だが、何か様子がおかしい。
一応会話は成立しているが、違和感がある。
だが、かの子を連れて行けと言っている以上、こちらが乗り込む必要も無い。
南條が数分待っていると、エレベーターのドアが開いた。
見慣れないかの子の姿に一瞬目が奪われるが、次にはその赤い目に気がつく。
――……え……?
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