南條 17

2/10

193人が本棚に入れています
本棚に追加
/737ページ
かの子を自宅マンションへ送った後、再び聡子の指示で西潟の張り込みに向かった。 今現在、二課のメンバーが交代で張っているという。 場所はまだ大学の中で、一度も出てきていないらしい。 「おう、こっちだ、南條」 車を大学の駐車場に停め、正門の辺りをうろついていたら、永桶が声をかけてきた。 「お疲れ様です。状況は」 「まったく動きは無し。寝てるんじゃないかと思うぞ、下手すると」 苦笑いして返す南條を、永桶は気まずそうにのぞき込んだ。 「それより、捕り物があったんだってな。お嬢ちゃんの方で」 「……ご存知でしたか」 「ああ、係長からさっき連絡があった。無事か?」 誰が、とは言わないのは暗黙の了解だ。 「――……多少影響はあるかもしれませんが、まだ大丈夫じゃないでしょうか」 すると、永桶は大きく息をついた。 何かと気にかけてもらえるかの子を、少しだけ恨めしく思う。 おい、嬢ちゃん。頼むから皆の寿命を縮める真似はやめてくれよな。 だが、南條の願いは、かの子には届く事は無かった。 塩原からの着信があったのは、それから数時間後。 未だに西潟の方には動きは無かった。 時折、他の人間が建物を出入りするものの、西潟の姿は見えない。 永桶に目でうかがうと、うなづいたので振動を続ける電話に出た。 すると、かの子からの定時連絡が無い上に、連絡が取れないとの事。 南條には嫌な予感しか無かった。 「――……またか」 『…………思いたくは無いンスけど、可能性は十分すぎます。東裕美の方に触発されて、長谷倉に会っているんじゃ……』 南條は塩原に長谷倉の自宅を教えてもらうと、すぐに永桶に許可をもらい車を出す。 ――……どうして、嫌な予感ほど当たるんだよ! できる限りのスピードで長谷倉の自宅マンションにたどり着くと、エントランスにあるインターフォンで、メールにあった部屋番号を押す。 少し間があり、返答したのは長谷倉の声だが、何か様子がおかしい。 一応会話は成立しているが、違和感がある。 だが、かの子を連れて行けと言っている以上、こちらが乗り込む必要も無い。 南條が数分待っていると、エレベーターのドアが開いた。 見慣れないかの子の姿に一瞬目が奪われるが、次にはその赤い目に気がつく。 ――……え……?
/737ページ

最初のコメントを投稿しよう!

193人が本棚に入れています
本棚に追加