南條 17

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戸惑う南條に構わず、かの子は駆け出し、扉が自動で開くのを無理矢理手で開け、そのままの勢いで南條に飛びついた。 「嬢ちゃん!?」 そのまま勢いよく泣き出したかの子に驚くが、離さずに更に抱き寄せた。 泣きじゃくるかの子に異常が無いか確認したかったが、今はとにかく落ち着かせようと、下ろしていた髪を撫でる。 徐々に感情が落ち着いてきたのか、しゃくりあげるようにするかの子に、南條は小声でつぶやくように言う。 「……大丈夫……じゃねぇよな……」 それは問いかけではなく、断定。 「……嬢ちゃん……前も言ったけど、キツかったらやめていいんだからな」 わざわざ身を削るような真似を、誰が望むのか。 だが、かの子は、その言葉を聞こえないふりをする。 そしてようやく泣き止むと、気まずくなってしまったのか南條から離れようとするが、逆に抱き込める。 今はまだ、こんなかの子を離したくは無かった。 「南條……?」 「…………強がるな……。……オレがいるから……」 「…………うん……」 思わずこぼれた言葉に、珍しく素直にうなづいたかの子は、だが、南條の腕から逃れた。 「嬢ちゃん?」 かの子は何かを耐えるように、そして、顔を上げた。 それは、南條が今まで見た事も無いような、悲しそうな笑顔で。 一言。 ただ、一言だけで、南條の動きを止めた。 「悠司さんが、待ってるから」 ――……ああ、そうだな。 ……他人の彼女、だったな、お前は。 南條は何も気にしない風で、うわべだけの会話をかの子と交わす。 そして、マンションから出れば、塩原が待っていた。 無意識なのか、その視線は完全に南條を敵視しているように見えた。 ……分かってる、邪魔なんてするつもりもねぇよ。 苦笑いで、かの子を塩原に渡すと、南條は停めていた自分の車に乗り込み、再び西潟の張り込みに戻る。 ――……本当に、分かっているのか……? 自分に問いかけ続けるが、答えなんて出るはずもなかった。 翌朝、聡子から成島の容態が落ち着いたので、一般病棟に移るという連絡が入った。 永桶に声をかけ、そちらに向かう。 事情聴取には塩原も向かうらしい。 だが、捜査である以上、私情は挟まない。 お互いに。
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