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南條が病院に到着すると、ロビーで野澤が待機していた。
「おはようございます、南條さん」
野澤はそう言うと、成島の病室まで案内をすると申し出る。
二人で、すぐ近くにある病棟向けのエレベーターの前で、その到着を待った。
「今、北大路係長も向かっていると、塩原巡査から伺いました」
「――……そうか。……一応、この件はアイツに任せているから。オレはまあ、当事者として事情を知りたいだけだ」
「……今回の件では、いろいろと、ありがとうございました」
野澤が頭を下げようとするのを、南條はすぐに止める。
「いや、こっちも色々と世話になったんで」
「――……成島くんが助かったのは、皆さんのおかげです。……裕美さんも感謝してます」
そう言いながら、野澤は止められていた頭を下げた。
「……彼女、大丈夫ですか」
南條は、到着したエレベーターに乗り込むと、野澤に問う。
「――……大丈夫とは言い切れませんが……少なくとも、南條さんの声は届いたと思います。……捜査に協力したいと言ってました。……復讐の事は口にしていません」
それだけでは、いまいち判別がつかないが、本人もいる事だし病室で確認すればいい。
そう思って案内されるがままに成島の病室に入ると、衝立の向こうには、裕美と、塩原と――かの子がいた。
すると、一瞬だけ目が合ったが、すぐにそらされた。
「あの……昨日はありがとうございました」
裕美が南條に気がつき、声をかける。
南條はそれに目礼で返した。
「裕美さん、成島くんは目が覚めましたか?」
少々焦りながら、野澤が裕美に確認すると、裕美は首を横に振った。
「……一応、目が覚めたんだけど……またすぐに眠ってしまって……」
「……そうですか……」
野澤は申し訳なさそうに、塩原を見る。
「申し訳ありませんが……こんな状態ですので、一度、お引き取りいただいてもよろしいでしょうか……?」
「あ、いえ。俺、待ちますから」
「ですが――……」
野澤がためらい、言葉を探していると、不意に扉が容赦なく開かれた。
「申し訳ない!失礼する!」
聡子が転がり込むように入って来るのを、部屋にいた全員であっけにとられながら見た。
「か……係長!?」
「ママ!?」
南條とかの子の声がかぶり、一瞬、お互いに目を見張るが、すぐに持ち直す。
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