南條 17

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「ああ、すまない。つい大声になってしまった」 裕美は自分に向かって頭を下げる聡子を、目を丸くして見返す。 その反応を見て、初対面である事に気がつくと聡子は頭を下げた。 「申し訳ない。騒々しくしてしまった。県警捜査二課二係係長、北大路聡子だ。そこにいる北大路かの子の母でもある」 「あ……東裕美です……」 後ろめたい事が山ほどあるせいか、裕美の声が心なしか小さい。 だが、それを気にも留めず、聡子は話を続けた。 「成島弘明はまだ目覚めないか」 誰に問うでもなく、聡子は言う。 「あ、ハイ。それで、一旦は引き上げるか、待っているかという話の最中で」 代表して南條が返事をした。 それはこの中では自分が適任に思えたからで。 「でっ……でも、ママ、そんなに急いでどうしたの?」 かの子が張り合うように、聡子に質問を投げると、南條はつい視線を向けてしまう。 ――……それだけなのに、罪悪感を覚えてしまった。 「ああ、それなんだが、昨日からずっとサイバー課の方で西潟が作ったであろうサイトを探していたんだが……。ようやく、それらしき痕跡を見つけたと思ったら、一瞬ですべてのパソコンが使い物にならなくなってしまったんだ」 「え……全滅ですか!?」 驚いた塩原が声を上げ、慌てて手で口を押さえた。 「――……サイバー課のヤツが言うには、こうやって探されるのを見越してたんだろうと。……成島弘明は、この方面に強いんだろう?何か手が無いかと思って聞きに来た」 「……そっちの都合次第で、利用するって言うんですかぁ?」 「成島さんっ!!」 不意にかかった声に全員がそちらを向くと、成島が目を開けてこちらを眺めるように見ていた。 裕美が急いで様子を確認する。 「今、ナースコールするから……」 そう言って伸ばした裕美の手は、成島に捕らえられた。 「そんなに急がなくても大丈夫だよ」 「でも……」 不安気な裕美を見て、成島は口元だけを上げる。 「大丈夫だよ。これくらいじゃ、オレは死なないから」 そうは言っても、その青白い顔を見れば強がりだと分かる。 「それより、裕美ちゃん。……コレは一体どういう状況なのか、説明してくれない?」 裕美は気まずそうに野澤を見上げる。 野澤はうなづき、口を開いた。
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