プロローグ

1/1
前へ
/737ページ
次へ

プロローグ

――アタシハ、ヒトゴロシダ――……。 窓の外を見下ろせば、じわりじわりと赤が広がっていく。 マンションの五階からなのに、その姿ははっきりと網膜に焼き付いた。 「お嬢さんっ!見ちゃいかん!」 「もう手遅れです!!」 窓の外へ吸い込まれて行きそうなあたしを、力の限り押さえこみながら、刑事たちが叫ぶ。 ――分かってる――。全て、あたしのせいだって。 ――でも――……。 「松村さん!……松村さん……っ……!!」 呼びかけても、応えは無くて。 あたしは、振り返ってこちらへ銃を向けたままの、その男をにらみつけた。 その男も、それに応えるように、にらんで返す。 だが、次には崩れ落ちるように、前に倒れこんだ。 そこには、男の右腕から流れ出たおびただしい量の血液。 周りにいた男たちが、慌てて男の名前を呼びながら駆け寄る。 あたしは、そこで初めて、その男の名前を知った。 ――……『南條』……と……。
/737ページ

最初のコメントを投稿しよう!

198人が本棚に入れています
本棚に追加