きっと彼は夢を見るだろう

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どうなってんだ? 窓一つない八畳程の真っ白な部屋で、俺は覚醒する。 昨日の事を思い出そうにも……不自然なくらい覚えていない。 だが、今はこの部屋から出る事が先決だと判断した俺は辺りの状況を確認した。 部屋の外へ抜けるドアは、俺の後ろにあったが当然のように鍵がかけてある。 鈍い銀のドアノブが異様に目立ち、忌々しく見えた。 他に目ぼしい物として、ドア以外に部屋の側面部にバカでかい電子時計が埋め込まれていた。 赤字のデジタル文字が、秒単位で表示され時間はちょうど1時間半を切っている。 制限時間か何かか? そして、一番のメインとして俺からもっとも離れた位置に寝そべっている女性。 特に手足に錠もついてなかったので、慎重に俺は女性を起こしに行く。 女性を揺さぶると、彼女はうーんと瞼をこすり目を覚まし、俺に驚く。 「えっ?えっ?えっ?」 俺は距離をとった。 彼女の反応に却って冷静になり、安堵する。 あれ?何かおかしい。 俺も最初に反対側に寝そべっているあんたを見つけてなかったら、そんな感じだったんだ。 しばらくして、彼女も落ち着いたのか小さなカバンの中身を確認した上で、おそるおそる俺に話しかける。 「あのう、ここはどこなんでしょうか?」 「僕も知らないんです。気づいたらここに。自分が誰だかわからないのです」 俺は先程の違和感の正体を理解した。 彼女はとぼけたように話した。 「すいません、私も……誰でしょう?」 記憶喪失の俺の前に登場した人は、記憶喪失者だった。
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