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(でも、有紗ちゃんが居なくなって寂しいな……友達だったのに……)
有紗とは小春と仲が良かった、彼女より7歳も年下の少女だ。
彼女は母親からネグレクト(育児放棄)を受けており、養護施設で保護をされていた。
だが一週間ほど前に心を入れ替えた母親が有紗を引き取りに来て、彼女は無事に自宅へ戻れたのである。
めでたくはあるが、有紗が施設を出た日に小春は丁度インフルエンザに かかって寝込んでいた為、お別れの挨拶が出来なかったことが唯一の心残りだった。
それに小春が この施設で友達と呼べる相手は有紗だけであり、彼女が居なくなったことで小春は また孤独になってしまった。
(…………悲しんでちゃ、ダメ……だよね。有紗ちゃんは大好きな お母さんと また暮らせるようになったんだから……喜ばなくちゃ)
微かに滲んできた目尻の涙を拭い、気合いを入れるように頬を叩き、ゆっくりと立ち上がる小春。
有紗からの手紙は机の引き出しへ仕舞い、彼女は扉を開けて部屋の外に出る。
すると扉を閉める際、外側のドアノブに小さな紙が貼り付けられているのが分かった。
『人殺しの一族』――そう殴り書きされている紙を見て、小春の顔が悲しげに歪められる。
いつものこととは言え、やはり心は痛む。
小春が このような嫌がらせを受けるようになったのは、母親である御法川 冬子(とうこ)が逮捕されてからだ。
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