第1章 差し出された手

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父も姉も同時に死んでしまった。 突然 身体が爆発し、ただの肉片となってしまったのだ。 何故そのような変死を遂げたのか、未だに原因は不明のまま。 こうして家族を亡くした身寄りの無い小春は、児童養護施設に入れられたのである。 そして この出来事は彼女に強い心的外傷を与え、父と姉が爆死した瞬間がフラッシュバックとして頭に過(よぎ)るようになった。 それだけでも辛くて苦しいのに、施設内でも こうした嫌がらせを受け続けており、小春の心は もう限界に近かった。 (…………パパ……お姉ちゃん……) 有紗が施設を去り、傷心ぎみの所に この暴言。 胸が殴られているように強く痛みだし、目尻に溜まった涙が頬を伝った。 「あっ! 居たぞ、人殺しが!」 不意に声が聞こえて振り向くと、小春と同じ年頃の少年が険しい表情で駆け寄ってくるのが見えた。 「な、なに……」 小春が疑問を口にするより先に少年が手首を掴み、力任せに思いきり引っ張ってきた。 「痛い! 何をするんですか!」 「いいから こっち来いよ、このキチガイが!」 腕を引かれ、強引に歩かされる小春。 されるがまま彼に ついていくと、やがて男子トイレの前に同年代の男女が3人集まっているのが見えた。 その子供達は開いている扉の中を凝視しており、まるで化け物でも目撃したように表情が強張っている。 「おら! 何なんだよコレはっ!!」 少年から手を離された小春は彼に突き飛ばされ、皆が注目している男子トイレの前へ倒れこむ。 強(したた)かに ぶつけた腕や身体の痛みを我慢しつつ、起き上がってトイレに顔を向けると、中にネズミの死骸が大量に置かれている光景が目に入った。 青いタイルは所々にネズミの血が付着しており、さらにネズミの死骸は どれも身体を切開されていて、解剖図のように内臓が丸見えになっている。 (……やだ……気持ち悪い……!) あまりにも おぞましい光景に言葉を失い、吐き気を覚える小春。 そんな彼女を少年達4人が取り囲んだ。
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