第1章

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スーパーで買った1番安いインスタントのコーヒーを入れ、お湯を注ぐ。 お弁当箱の隙間を埋め終わり 時計は7時。 「悠介、朝だよー。パンとご飯どっち?」 「・・・ごはん。・・・あと、昨日のお味噌汁」 丸い布団が、もぞもぞ動く。 キッチンに来るまで、まだかかりそうだ。 机に置いたコーヒーを流し 棚の奥から、結婚式の引き出物のフィルターコーヒーを取り出す。 「おはよぉー。」 寝癖がしっかりついた頭をかきながら 悠介が、奈緒の正面に、ゆっくり座る。 「今日のコーヒー、いつもと違う」 「美味しい?」 「うん、おいしい」 「・・・よかったね」 投げつけようと思って膝に置いていた悠介の携帯を 机の隅に置いた。 桜前線は、やって来て そして散っていく。 散った後の悠介と話を聞いてあげよう。 いつか、咲いた時の私の話を聞かせたい。 一緒に歩いていく。 そう決めた夫婦だから、話をしたい。 幹はそのまま、咲いて、葉だけになり それも散って。 甘いだけじゃない 苦味があって、香があって そんな人生を、悠介と歩いていく。 「このコーヒーも美味しいね」 私は、笑う。
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