クリスマスキャロルは流れない

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 クリスマスイヴを10日後に控えた12月中頃。世間では高名でTVに出ずっぱりの 占い師が「世界は12月25日になった瞬間崩壊する」などとほざいて、人々も半信 半疑でそれぞれの生活をしている。  俺もその一人だ。もっとも信じない派の人間だが。  世間ではクリスマスムードでイルミネーションが輝いているが、俺は年末まで 仕事、仕事のしがないサラリーマンをひたすら続けている。  ボーっと帰り道を歩いていると、多分両親の所へ急いでいると思われるふわふ わした金髪をなびかせた青い目の少女が走っていった。少し見とれつつそれを横 目にため息をつく。 「はぁ、新卒で入った会社も不景気でいきなりボーナス減るし、25の誕生日も控 えてるってのに彼女もなし…か。とりあえず仕事があるだけマシと思うかね」  と同じ新卒で入ったが今は無職な友人達を思いつつ呟く。そいつらは彼女いる 方が多いが。とは言いつつ別に彼女が欲しいとか、今そこまで欲しいか?と聞か れればNOに近い。学生時代もそれなりに付き合った事があった事も付け加えておく。  とりあえず日々、普通に目立たず暮らしている。よく言えばそうだが、実際は どうしようもない今の自分を変えられずグダグダと暮らしているのが正しいのか も知れない。  夢はあったはずだが、ウダウダ迷っている間に今に至ったので、あまり考えな いようにしている。 「何だか理不尽だよなぁ。このクソ寒いのにお熱い事で」  イルミネーションを背にいちゃつくカップルを横目に、半ばヤケクソ気味に更 に小声で愚痴る。ふと見ると薄暗い電気のついた自販機前にブルブル震えつつ 立ってる少女を見つける。  少し観察した結果、どうやら小銭があと10円足りず『あたたかーい』飲み物を 買えないで震えているようだ。薄暗いので怒りか寒さかわからないが。それであ きらめるにあきらめられないと言った所だろう。
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