雨の降る頃、僕らは出会った。

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街は人っ子一人いない閑散とした空気を纏っている。黒く濡れたレンガの建物が覆い被さるように同じく黒い空を隠していく。 年中ついているオレンジの街灯は点々と黒に満ち溢れた通りを照らしていた。 俺はただ足元だけを見つめ、とぼとぼと歩く。黒いコートが水を吸って体温が限界だ。 寒い 寒い 母さん。 父さん。 メアリー。 かつて愛した人の名が頭をよぎっていく。 こんなこと今まで何回もあった。 寒くて死にかけて………でも捕まったら意味がないから体力を振り絞って。 飯もまともに無い中頑張ってきたんだ。 この街からは出られない。 出ちゃいけない。 たった一つ俺の持ってる物だから。 だから逃げなきゃ。
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