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俺は路地裏に足を踏み入れるとごみ箱の影に腰を下ろした。
雨でぐしょぐしょに濡れた服が気持ち悪く肌にはりつく。しかしこの感覚にもう慣れてしまい、別段どうと思うことはなかった。
ランプに照らされた赤黒いレンガの壁に挟まれて、たとえそれが人でなかろうとどこか安堵に似たものを覚える。
ここには人など来ない。
追っ手を恐れる必要は無いだろう。
そう思うとフッと体から力が抜けて壁に体を預けた。
腹減ったな………。
気を抜くと空腹が訪れる。
ダメだ。
眠い。
近頃休まずに街の中を逃げていたからか体が限界に近い。
見つかったら不味いのに。
捕まったらいけないのに。
頭では分かっていても体が言うことをきかずに俺はたやすく意識を手放してしまった。
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