メメント・モリの流儀

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「そういえばこの店、紅茶が置いてませんよね」  仁科春(にしなはる)、十七歳。喫茶店「メメント・モリ」でアルバイトに励む、ごく普通の女子高生です。  メメント・モリという言葉をご存知の方は納得だと思いますが……間違っても店名にするような意味は持ち合わせていません。  メメント・モリとはこれすなわち、「死を思え」ということだから。  今ので察してほしいのですが、あたしがアルバイトをしている喫茶店の店主はだいぶ変わっています。  年がら年中バーテンダー風の装いでカウンターにいるのがマスターです。  年齢は三十代くらい。縦ロールがお洒落に見えてしまう、美人の奥さんがいる男性です。(正直、モテる要素はないように見えますが) 「仁科さん、どうしました? 急にそんなことを」 「急に疑問が出ちゃったんですよ」  マスターが何故、メメント・モリという物騒な言葉を店名にしているか? それはまた、別の話ですが。  そんな哲学的な言葉を店名にしている時点で、性癖は察してもらいたいです。
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