メメント・モリの流儀

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「喫茶店って、コーヒーのイメージが強いですけど。紅茶がまったくないのは珍しいのかな、と」  喫茶店「メメント・モリ」には、スクランブルエッグなどの軽食はありますが、飲み物の大半がコーヒーです。  お子様向けにオレンジジュースはあるけど、紅茶は一切、ミルクティーすら取り揃えていません。 「何か理由があるんですか?」 「理由……ですか」  マスターは困ったように首を捻ります。 「そうですね。理由はあります。飲んでいただければわかると思いますよ」 「淹れてくれるんですか!?」 「仁科さんが考えるヒントになるのなら」  やった、とあたしはガッツポーズをしました。今は午後五時。お客さんも常連さんくらいしかこないこの店は、今。あたしとマスターの二人だけです。  マスターがお湯を沸かし始めます。慣れた手つきで用意するのは、コーヒー豆と……戸棚の奥から出てきた紅茶葉。
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