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それでも悔しい。
どうして私はいつも誰かに助けられないとダメなんだろう。
周りを怖がって、自分で動くことが出来ない。
臆病で意気地なし。
こうやって藍くんに迷惑をかけて……。
「ごめんなさい……」
「なんで謝るの?白雪は悪くないじゃん」
「でも、私のせいで楽しい時間台無しにしたから……」
そう言って落ち込む私を見て藍くんが息をついた。
「俺、別に楽しんでないから」
「え……?」
「当たり前でしょ?好きな子と一緒に居られない時間なんて、何も楽しくないって。俺は今日、白雪と一緒に居たかった。でも周りは俺に自由なんて与えてくれないから。ずっと不機嫌だったの、知らなかった?」
首を横に振ると藍くんが笑った。
「人に囲まれてるから幸せだって事はないんだよ。俺は、こうやって白雪と二人で居られることが一番幸せだから」
手を掴まれて微笑まれる。
その綺麗な微笑みに思わず赤くなった。
「部屋まで送る」
藍くんに手を引かれて部屋まで送ってもらう。
藍くんは私を布団の上に横にすると優しく頭を撫でてくれた。
「女子部屋に入ってる事バレたら増田先輩に怒られるかな」
「大丈夫だよ。増田先輩は優しいから」
「めちゃくちゃキレてる先輩はめっちゃ怖かったけど」
先ほどの先輩の行動を思い出して二人で笑う。
それから藍くんが何かを思い出したのか「あ」と言った。
「そういえば、変な男に絡まれてたけど大丈夫だった?」
「うん。布施くんも加代ちゃんも助けてくれたから」
「布施の事もビビったけど、俺が気になったのは今日の白雪なんだけど」
「私?」
「なんか、俺の事避けてなかった?」
そう言われてドキッとする。
何て答えようか迷ったけど、絶対に嘘をついてもバレるのは目に見えている。
これは正直に白状した方がいい。
「……藍くんが、遠い存在みたいで」
「え?」
「先輩にも同期にも人気で、私が話しかけるのも気が引けて……。気にしすぎて憂鬱になってたら加代ちゃんに言われたの。『藍くんの事を考えないようにすれば』って。関わらないようにすれば、少しは気分も楽になるかもって……。だから藍くんの事避けてごめん」
申し訳なくて藍くんから目を逸らすと藍くんはため息をついた。
「じゃあ、俺からもっと話しかければよかった」
「……?」
「何かしたのかと思ってちょっと焦ったんだから」
藍くんは私の両手首をつかむと地面に押し付けるようにして私に覆いかぶさった。
「試されてるのかもって、ドキドキしてたんだからな」
「た、試す……?」
「俺が白雪の事本当に好きなのかって、白雪に試されてるのかもって。そんなのどうやって示せばいいんだって悩んで、一日中頭抱えてたって言うのに」
「ご、ごめんなさい……」
「そんな試すような事しても無駄だから。俺が白雪の事をめちゃくちゃ好きなのは今更どう覆そうと変わらない。離れて欲しくても絶対に離れたりしないから。俺が、白雪の事手放すわけないじゃん」
藍くんはそう言うと私の口を塞ぐようにキスをした。
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