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藍くんから手渡されたサンドイッチ。
こういったオシャレな食べ物、藍くんってよく知ってるな。
一人だと気後れして、食べたいって思っても勇気が出なくて食べれない事が多いから。
一口食べてホッとする。
藍くんは安心したように息をついた。
「食べるのしんどくない?」
「平気」
「そっか、良かった。食べやすいやつの方が良かったかもってちょっと思ってたから」
「ごめんね、色々迷惑かけて……」
「いいよ。迷惑かけられるのも彼氏の特権でしょ?」
藍くんは本当に優しいな。
……どうして河井さんと別れたんだろう。
不意にそう思ってサンドイッチを食べる手が止まる。
「どうしたの?」
藍くんにそう聞かれて私は藍くんを見た。
「あのね、今日フィーユ・カムオン・シャトンさんと打ち合わせに行ってたの」
「ああ、江藤先輩から聞いた。それがどうかした?」
「その担当者さんが藍くんの事知ってて、友達だって」
「俺の友達?」
「河井さんって言うんだけど……」
河井さんの名前を口にすると藍くんが固まった。
その反応に確信した。
やっぱり彼女は藍くんの……。
「元カノ、だったりする?」
「っ!?なんで……」
「増田先輩が、何となくそうじゃないかなって言ってたから……。そうなんだね」
「確かに理沙は前の彼女だけど……っ。でも、もう俺とは何のかかわりも無いし、むしろ俺、アイツの事許してないから」
「許す?」
藍くんは嫌そうに顔を歪めて頭を抱えた。
「今でもたまに思い出すんだけど、アイツ……理沙が浮気してたとこ」
浮気!?
思わず持っていたサンドイッチを落としそうになる。
藍くんという高スペックな彼氏がいて浮気なんて考えられない!
「俺の友達とキスして、そのまま……。二人仲良くホテルに消えた時は本気で殺意芽生えた。そっから理沙とは会ってない。ていうか、会いたくない」
藍くんが苦しそうな顔をする。
私は藍くんの手を握った。
「ごめんなさい……嫌な事思い出させて」
「あ、ううん。白雪不安にさせるくらいなら、いくらでも昔の事話すし」
「……ありがとう」
藍くんに嫌な思いはしてほしくない。
私が勝手に嫉妬してモヤモヤしてただけ。
藍くんは関係ない。
元カノがなんだ。
元カノは元カノなんだから、もう関係ないじゃないか。
私は残りのサンドイッチを食べて気合を入れた。
「ありがとう、藍くん。仕事、頑張るね」
「頑張るのは良いけど、頑張りすぎないで。倒れたら心配だから」
「大丈夫」
「……また、大丈夫って言う」
「え?」
「癖になってるなら仕方ないけど、少しは俺の事頼ってくれると嬉しい」
藍くんはそう言うと軽く私にキスをして立ち上がった。
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