馬鹿、また頑張りすぎてる

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突然の事で固まっていたけど、頭でようやく何をされたか理解した途端顔が熱くなる。 「藍くん!?ここ、会社……っ!」 「知ってる。でも可愛い白雪が悪いから」 意地悪に微笑んで藍くんが部屋を出て行った。 本当に、あの意地悪くんは……っ。 でも、藍くんのおかげで頑張れそうな気がする。 頑張ろう。 気合いを入れて仕事に取り掛かる。 さっきよりも頭は冴えていて、スムーズに作業することが出来た。 ♡*:;:*♡♡*:;:*♡♡*:;:*♡♡*:;:*♡♡*:;:*♡♡*:;:*♡♡*:;:*♡*:;:*♡♡ 今日は増田先輩が用事で来れないため、一人でフィーユまで来ている。 デザイン画が出来たので細かい打ち合わせをお願いされたのだ。 正直、河井さんと二人で会うのは気まずいんだけど……。 綺麗な応接室に案内されてしばらくすると河井さんがやって来た。 「お待たせしてすみません」 「いえ、私も早く着いてしまったので」 「ふふっ、松森さんは優しいんですね」 美人に微笑まれると心臓がキュンってなる。 これは藍くん、惚れるよ。 「あの、仕事とは関係ないんですが。松森さんが私と同じ歳だと聞いて、良かったら仲良くしていただけないかなと思っているんです」 「え!?」 藍くんの元カノでなければ嬉しい話だ。 いや、彼女はまだ私が藍くんの彼女だと知らない。 だからこうやって言ってくれているんだ。 それに、藍くんの元カノってだけで毛嫌いするのは違う気がする。 私は笑顔で頷いた。 「もちろんです。私も仲良くしていただけるのであればとても嬉しいので」 「良かった!それじゃあ、仕事のあとでライン交換しましょうね」 嬉しそうに笑う彼女に罪悪感が浮かぶ。 何も悪い事してないんだけど、何だか騙してるみたいで……。 河井さんにデザイン画を渡して細かい修正のアドバイスをもらう。 この人、仕事が出来る人だ。 分かりやすく説明してくれるし、何より修正した方が圧倒的に着やすくなる。 同じ歳って事は、新入社員って事だよね? それなのに、もう一人でこういった企画を任せられてるんだ。 その事に劣等感を覚えてしまう。 「ドレスは何とかなりそうですが、やっぱりタキシードに関しては男性の意見も必要ですね……」 河井さんがタキシードのデザイン画を見て困ったような顔をする。 「一般男性では分からないでしょうし、松森さんの周りに話を一緒に聞けそうな方っていませんか?」 そう問われて浮かんだのはビジネススタイル部。 でも、そこには藍くんが……。 『会いたくない』 藍くんは確かにそう言った。 でも、ビジネススタイル部は何も藍くんだけじゃない。 江藤先輩にでも相談してみよう。 そう思っていると河井さんが口を開いた。 「出来れば、私達と言い合えるような方がいいんですが。年が近いとか、同じ年に入社された方とか」 ドキッとした。 この人、もしかして藍くんに会いたい? そう思ったけど、その考えを消すように頭を振った。 いや、河井さんは仕事として言ってるんだ。 だって『藍くんを呼べ』とは言ってない。 私が勝手に思ってるだけだ。 それに、河井さんと話して気づいてしまった。 この人は、とてもいい人だって。 そんないい人が、どうして浮気なんてしたんだろう? どうして、藍くんを裏切るような事をしたんだろう? ・
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