好きすぎて、馬鹿みたいだ

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朝から違和感があった。 体がだるいなって思ってて……。 絶対に熱があるって分かってたけど、藍くんに心配をかけたくなくて黙って仕事へ向かった。 だけど、今物凄く後悔している。 頭が痛くて仕事にならない。 体の関節も痛いし、パソコンの画面も揺れてるし。 迷惑をかけたくないのに、これじゃあ逆に迷惑だよ。 「白雪ちゃん、大丈夫?なんか体調悪そうだけど……」 増田先輩が心配そうにそう聞いてくれる。 私は無理やり笑顔を作って先輩を見た。 「大丈夫です、心配をおかけしてすみません。少し貧血になってしまって」 「無理しちゃダメだよ?最近の白雪ちゃんは結構無理しすぎてる所あるから」 「すみません……」 これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。 楠さんに言われた『仕事の出来ない人』という言葉は今だに私の心の奥に刺さっていて、そうなりたくなくて必死になっている。 このままじゃ本格的に『仕事の出来ない人』だ。 デザインの資料を一枚手に取る。 周りに書かれている文字が揺れて見えて気持ち悪くなってきた。 全く仕事が進まない中、昼休みになった。 食堂へ向かう先輩達に挨拶をして一人きりになる。 ちゃんとご飯を食べるって藍くんと約束したし、今日は加代ちゃんと食堂で待ち合わせしてるんだけど……。 体が重たくて立ち上がりたくない。 このまま椅子と同化できないものか……。 机に頭を預けると机の冷たさが心地よかった。 あ、気持ちいい。 「白雪ー?」 部屋に加代ちゃんが入ってくる。 加代ちゃんは私を見て目を丸くした。 「どうしたの?」 「加代ちゃん……」 「なんか顔赤いけど」 「ごめんね、今行くから……」 起き上がろうとしてフラッとする私を支えてくれる加代ちゃん。 それから私の額に手を当てた。 「ちょっと待って白雪。あんた凄い熱あるじゃん」 「気のせいだよ……」 「いや、気のせいじゃないのは自分が一番分かってるでしょ?なんで仕事来たの?」 「やらないといけない仕事が沢山あるから……」 「あのね、体調が悪い時に仕事なんて出来ないから。全く進まないのなら休んで一日でも早く回復して仕事に戻ってくれた方が先輩達だってありがたいに決まってる。無理してまで仕事する必要はないの、分かってる?」 「でも……」 「いいから、帰るよ」 加代ちゃんは私のカバンを掴むと私の腕を引っ張った。 足がフラフラして真っ直ぐ歩けない私を見て加代ちゃんはため息をついた。 「このままじゃ白雪倒れそう。ちょっと待ってて」 加代ちゃんは再び私を椅子に座らせると部屋を出て行った。 ボーっと地面を見つめていると部屋に誰かが入ってきた。 相手を確認する元気もなくて、ただ地面を見つめているだけ。 するとその人は目の前にやって来て私の顔に手を滑らせた。 あ……冷たくて気持ちいい。 目をつぶってその手に顔をゆだねていると目の前の人が口を開いた。 「なんで言わなかったの?白雪」 「え……」 目を開けて目の前の人を確認すればその人は藍くんだった。 驚いて立ち上がろうとしてふらつく。 そんな私を藍くんが抱き止めてくれた。 ・
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