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ベッドの上に撃沈する。
それから両手で顔を覆って悶えた。
あのイケメンは私を殺す気ですか?
頼っても嫌じゃないって言われて嬉しくない女はいないだろう。
それもあんなスパダリに。
私は息をついて天井を見上げた。
先ほどに比べれば随分と楽になった。
仕事、放って来ちゃったな……。
フィーユとの合同プロジェクト。
会社にとっても大事な案件。
それも大手テーマパークからのご依頼だ。
何としても成功させなければならない。
それなのに私は……。
「体調管理も仕事の内、か……」
江藤先輩の言葉が胸に刺さる。
無理して体を壊してたら意味がない。
焦っても私は河井さんのようにはなれないのに……。
しばらくすると藍くんがおかゆを持って寝室へやって来た。
「食べれそう?」
「ありがとう。食べる」
藍くんからトレーを受け取って食べ始める。
胃に染みる……。
「理沙の事、なんだけどさ」
突然そう言われてピタッと食べる手が止まった。
「白雪が気にする必要ないよ。理沙は確かに一人で企画を任されてるかもしれない。でもそれが、白雪が理沙より劣ってるってわけじゃないと思うから」
「……」
「理沙と白雪は違う。だから比べなくていい。白雪は白雪にしか出来ない事をすればいいんだよ。無理して駆け足にならなくていいよ」
藍くんの言葉に私は曖昧に微笑んだ。
きっと、河井さんがただのフィーユの人だったらここまで悩まなかったと思う。
でも河井さんは藍くんの元カノさんだ。
彼女よりも頑張らないと、河井さんに藍くんを奪われてしまいそうで怖い。
仕事の出来ない私より、仕事の出来るカッコイイ河井さんを藍くんだって好きになるから。
「……藍くん」
「何?」
「好きだよ」
「どうしたの?突然」
「分かんないけど、言っておきたくて」
そう言って再びおかゆを食べ始める。
藍くんは不思議そうに首を傾げていた。
おかゆを食べてから私は薬を飲んで横になった。
藍くん、仕事休んでくれたんだ。
私が倒れたりしたから。
嬉しさと情けなさで感情がぐちゃぐちゃ。
考えても仕方ない事だって分かってるのに考えてしまう。
食器を片付けてきた藍くんが再び私の側に来て頭を撫でてくれる。
その手が優しくて眠気を誘った。
「藍くん……」
「ん?」
「風邪、うつるよ?」
「いいよ」
「ダメ」
「うつったら白雪に看病してもらえるから」
「それは…する、けど……」
「うつすくらいの気持ちで治すことに集中して。とりあえず今は寝る」
「うん」
「おやすみ、白雪」
何故だか安心して目を閉じる。
本当に、心から『この人に会えてよかった』って思うな。
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