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きっと藍くんは分かってるんだ。
河井さんが簡単に人を裏切るような人じゃないって事。
だからこそ許せなかったのかもしれない。
信じていた人に裏切られたって思って、心に傷を負ったんだ。
ちゃんと話して、お互いが和解してくれたらいいのに。
……そうなったら、私と藍くんはどうなるんだろう。
不安になったけど、私は藍くんに抱き着くしか出来なかった。
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土曜日。
完全に体調も戻り、今は藍くんと河井さんと一緒にファミレスの一席に座っている。
この中に入ってから約30分ほど。
私達は何も話していない。
私はドリンクバーで淹れて来たウーロン茶を飲みながら二人の顔を交互に見た。
このままじゃ何も話さないまま終わってしまう。
自分が居る意味を思い出して意を決して口を開いた。
「えっと……黙ってるだけじゃ分かりませんよ……?」
そう言うと二人が気まずそうに私を見てから息をついた。
「ごめんなさい」
そう言ったのは河井さんだった。
藍くんに頭を下げてから手をギュっと握り締めた。
「今更、許して欲しいなんて虫のいい事は言いません。言い訳もしません。ただ、聞いて欲しかったの」
「……」
「あの日、どうして私が北原くんと一緒にいたのか」
北原くんと言うのは藍くんの親友だった人で、河井さんの浮気相手ということだろうか。
ていうか、本当に私が聞いてもいいような話?
場違い感半端ないのですが……。
「別に、俺より北原の方が良くなっただけだろ。まだ付き合ってんの?」
「違う!」
泣きそうな顔で否定した河井さんにドキッとした。
藍くんも驚いたのか目を見開いている。
「藍を嫌いになったとか……北原くんが良くなったとか……そうじゃないのっ。それに、付き合ってない……っ」
「は?何それ。付き合ってないのにホテルとか行ったんだ?その方が最低だと思うけど」
「あの日は本当に何も無かったの!信じて、なんて言えないけど……。北原くんはただ私に協力してくれただけなの……」
「協力って何?ホテル行って何も無かったなんて誰も信じないと思うけど」
完全に聞く耳を持たない藍くんに河井さんが涙目になる。
藍くんの言いたい事は分かる。
河井さんがそれだけ藍くんのことを傷つけてしまったから仕方ないって思うけど……。
「ああ、もしかして俺とセックスすんのつまんなくなった?ごめんね、俺下手くそで。北原使って上手に感じてくれる練習でもしてくれたわけ?」
「違う!違うの……っ、本当に、何もしてないの…っ!」
必死で泣かないようにしている河井さんに嘘は見えない。
きっと本当に何も無かったんだ。
だけど、どうしたら信じてもらえるか分からない。
後悔してるし、藍くんに信じてもらいたいし、きっと気持ち的には限界のはずだ。
これは二人の問題で私には関係ない。
口出しするべきじゃないのは分かってる。
だけど、こんな河井さんを無視するわけにもいかない。
「風間くん」
藍くんの目を真っ直ぐ見つめて口を開く。
藍くんは驚いたように私を見た。
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