好きすぎて、馬鹿みたいだ

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私は手に持ったウーロン茶を飲み干して立ち上がった。 「二人の誤解が解けて良かったです。これでもう、ギクシャクしなくて済みますね」 「ありがとうございます、松森さん。どうお礼をすればいいか……」 「お礼なんてとんでもない!やっと和解出来たんですから、私は邪魔ですよね」 そう言って歩き出すと藍くんに手を掴まれた。 「どこ行くの?」 「あとは、二人で」 「え?」 「話したかった事、沢山あるでしょう?私には分からないから。だからちょっとその辺歩いて来ます。そのまま家に帰るので、二人はゆっくりしててくださいね」 伝票をコッソリ持ってレジに向かう。 離れる努力をしないと。 本当は元に戻って欲しくないし、藍くんは私の彼氏ですって声をあげて宣言したい。 でも、私のワガママで二人を更に傷つけるのは違うから。 藍くんの中には河井さんがいて、河井さんの中には藍くんがいる。 お互いがまだきっと心のどこかでは好き合ってるんだって何となく表情で察した。 いいな……そういうの。 お会計を済ませて外に出ると一息ついた。 帰ろう。 それで、藍くんの家から出れるように部屋を探そう。 私が居たらお荷物だもん。 スマホで賃貸のサイトを開いて部屋を探す。 ぼんやりとしながらスクロールしているからか、全然内容が入って来ない。 私はきっと、人を好きになってはいけないんだ。 『この裏切者』 いつも好きになったらダメになる。 『気持ち悪い人形のくせに。お前なんて可愛くないから』 好きになったら……好きになってくれたら…… 『アンドロイドちゃん、貴女を愛してくれる人なんて絶対に現れないから』 壊れていくんだって、もう知ってたくせに。 スマホをカバンに入れてマンションに戻る。 鏡に映る自分の姿が気持ち悪くて嫌になる。 私は自分が大嫌いだ。 容姿も、中身も、全部。 『白雪ちゃんって白雪姫みたいだよね』 「やめて……」 『目とか大きくて超可愛い』 「やめて……っ」 『絵本から飛び出して来たお姫様みたい』 「やめてってば!!」 カバンを鏡に投げつけてその場に崩れる。 顔を両手で覆って、爪で何度も顔を引っ掻いて。 こんな顔、無くなればいい。 頭の中に昔言われた言葉が飛び交っている。 『可愛いね』 『どうせ整形だろ』 『そんな容姿憧れるー』 『いいよね、立ってるだけで男寄ってくるんだからさ』 『色白で羨ましー』 『男選びたい放題じゃん。やりたい放題できて最高ですねー、ビッチちゃん』 嫌だ 嫌だ 嫌だ……っ 「わああああぁぁぁああああ!!!」 泣き叫んで、私は包丁を手に取った。 そしてそのまま、私は自分の頬を包丁で切り裂いた_______ ・
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