好きすぎて、馬鹿みたいだ

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♡*:;:*♡♡*:;:*♡♡*:;:*♡♡*:;:*♡♡*:;:*♡♡*:;:*♡♡*:;:*♡*:;:*♡♡ 鼻につく薬品の匂い。 ぼんやりとした思考で私は目を覚ました。 私…何して……。 そんな事を思っていると声をかけられた。 「白雪!」 隣から聞こえてくる声は藍くんのもの。 隣を見れば藍くんが私の手を握っていた。 「藍くん……?」 「良かった……。しばらく目を開けないから、生きた心地がしなかった……」 頬に藍くんが手を伸ばして撫でてくれる。 それから痛々しい表情をした。 「なんで、こんな事したの?」 こんな事? そう考えてからハッとした。 そうだ、私……自分で自分を……。 「ごめん、なさい……」 「俺と理沙の事で不安になった?」 「……っ」 「何も不安になる事ないよ。俺も理沙も、もう終わった事だから。和解して、友達には戻れるかもしれないけど、もう一度付き合うなんてお互い考えてない」 「でも……っ」 二人の中にはまだお互いがいる。 そう感じたのは間違いない。 だけど、真っ直ぐ私を見つめる藍くんの目は嘘なんてついていなかった。 「俺は、白雪の事が本当に好きだよ。今までの誰よりも。こんなに好きで離したくないって思ったの白雪だけだし」 「藍くん……」 「勝手に俺から離れて行こうとしないで。ていうか、何勝手に自分で解釈して自己完結してるわけ?ファミレスの会計だって勝手にして。白雪の財布にお金入れといたから」 「え……?」 「彼女に出させるわけないでしょ?俺にカッコつけさせて」 藍くんはそう言うと優しく微笑んだ。 「俺は白雪の過去に何があったのか知らない。こんな事するくらい、自分の事嫌ってる事も知らなかった」 「……っ」 「でも、もう絶対にしないで」 「え……?」 「俺は白雪の全部が好きだから。白雪の顔も、声も、性格も、仕草だって、何もかもが好きなんだ。ほんと、好きすぎて馬鹿だなって思うくらい。そんな白雪を、たとえ白雪自身であっても傷つけないで。見つけた瞬間、めちゃくちゃ怖かったから」 藍くんは私の頬を撫でながら辛そうにした。 私は自分が嫌いだ。 それでも、そんな私を好きだと言ってくれる人が居る。 私の大事な人が、私を好きだって言ってくれる。 いつかこの幸せが壊れてしまうとしても、今はそれだけで十分だ。 私は「ごめんなさい」と謝って、藍くんの手に甘えた。 それからしばらくして私達は病院を出た。 頬に大きなガーゼが貼られていて痛々しい見た目になっている。 幸いなことに、痕は残らないと思うと言ってくれた。 手を繋いで帰り道を歩く。 自分で勝手に勘違いして二人をくっ付けようとしたとか…… 恥ずかしくて穴に入りたい。 マンションに戻ると私の荷物が散乱しているままだった。 鏡に投げつけてそのままだ……。 片付けていると藍くんも一緒に片付けてくれた。 「ありがとう……」 「ううん、いいよ。不審者にでも襲われたのかと思ったけど」 「ご、ごめんなさい」 謝ると藍くんが笑った。 ・
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