もう一人じゃない

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昼休み。 私は深いため息をつきながら目の前のから揚げを頬張った。 そんな私を怪訝な顔で見ながら口を開く加代ちゃん。 「どうしたの?」 「加代ちゃん……聞いてくれる?」 「面倒だと判断したら聞かない」 「酷い」 私は自分のスマホを加代ちゃんに見せた。 「同窓会のお知らせ?」 「うん……」 「高校の時の同級生と集まる事になんでテンション低いの?」 「高校生の時の記憶に、いい思い出なんて一つも無くて……」 「あー」 加代ちゃんは麻婆豆腐を口に含みながら頷いた。 「行きたくないなら行かなきゃいいじゃん」 「それが、そうしようと思ったんだけど……」 私はスマホをスクロールして『参加しました』の画面を見せた。 「間違えて『参加』のボタン押しちゃったの……」 「馬鹿なの?」 「うう……」 呆れたように言われて何も言い返せない。 自分でも馬鹿だなと思ったよ。 だけど取り消せないし……。 「すぐ行ってすぐ帰れば?顔見せたら終わりって感じで」 「そうだよね……。誰か連れ出してくれないかな……」 そう言ってため息をつくと隣に藍くんが座った。 「じゃあ俺が連れ出そうか?」 「藍……っ、風間くん!?」 驚いて藍くんを見れば加代ちゃんが頷いた。 「それいいじゃん。付き合ってるんでしょ?」 「そうだけど……っ」 「風間くんが迎えに来たら周り大騒ぎだろうけど」 絶対にそうだ。 こんなイケメンが迎えに来たりしたら、ハイエナと化している女の子達が黙っていない。 それに…… 同窓会には『あの子』も出席するみたいだし……。 「同窓会行って、初恋の人に出会っても浮気しないようにね」 「しないよ!加代ちゃんは私をなんだと思ってるの!?」 膨れると藍くんが笑った。 そうだよね。 すぐに行って顔見せてすぐ帰ればいいんだから。 関わらないようにすれば問題ないし、たとえあの子やあの人が居たとしても関係ないもん。 私には今、この幸せがあるわけだし。 気にしないようにしよう。 ホッと息をついて私はご飯を食べた。 藍くんは心配そうに私を見ていたけど。 ・
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