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「大森さんさ、ダメでしょ、この冷蔵庫の中」
「うわっ!!!」
やっぱり自分がいることに気が付いていなかったか。
そんなことよりも冷蔵庫の中だ。
チョコレートやクッキーのファミリーサイズが並べられている。
そして、そのすべての口が開けられている。
それだけではなく、ポテトチップスまで開封済みで口を留めて置いてある。
ヨーグルトは、セーフだろうけど……。
ゼリーはアウトだろう。
透明のタッパーの中は何が入っているのか謎だけど黒っぽい物がありそうだ。
この冷蔵庫の中を見ると佃煮とかではない気がする。
チョコレートのクリームとかか?
「ダイエットしてるって自覚が感じられないな」
これでは痩せるはずがない。
ここにある物を大森聡子が食べていなければ話は別だけれども、今枝に餃子を食べていいと言われて嬉々として食べていたようなヤツだ。
項垂れる大森聡子をキッチンに残してリビングに戻らせてもらう。
それにしても……。
協力すると言ったからには、大森聡子をせめて健康的な範囲内の体型にはしてやりたい。
ふぅっと息を吐いていつものくせで煙草を取りだして、しまったと思った。
目の前に来た大森聡子にたった今取りだした煙草とライター、ついでに携帯灰皿も差し出す。
「……やっぱ、これも処分して」
これで手持ちの煙草はすべて出した状態だ。
自分がここまで本気を見せれば、大森聡子だって少しは本気になるだろう……。
自分の差し出した煙草とライターと携帯灰皿をしばし眺めた後、急に立ち上がった大森聡子はどこかへと行ってしまった。
期待した。
自分が煙草をやめる本気を見せたから、大森聡子も冷蔵庫の中のお菓子類を自分に処分してくれと持って来てくれるのではないかと。
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