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が、大森聡子がテーブルに置いたのは小さな灰皿。
「最後に吸ってるところを見せて下さいよ」
「はっ?」
予想外の言葉に間抜けな返事をしてしまった。
「禁煙したら、王子班長が煙草を吸う姿が見られなくなるじゃないですか。王子班長の吸い納めで、私には見納め?」
「ハッ、意味わかんないね、大森さんって」
食べ納めに失敗した大森聡子に吸い納めと言われても説得力の欠片も感じられない。
でも、まぁ、吸い納めか。
これが最後だと覚悟を決めるのはいいだろう。
いつものように煙草を取りだし口に咥えて火を点けて、吸った。
大森聡子の視線が自分に向けられていると思うと、妙に緊張するっていうか変な感じだ。
「見過ぎだろ」
どう考えても見過ぎだと思って言ったのに。
「見たいんです」
自分の気持ちも知らないでシレっと言い放つとは。
「視姦されてるみたいで居心地が悪い。されるよりもする方が圧倒的に好きなんだよね、自分」
「……」
勝った。
大森聡子はサッと視線を逸らした。
その小さな動きに、そそった。
ゾクっときた。
虐めたい欲求が湧く。
久しく忘れていた気持ちだ。
商社の男なら大森聡子が嫌がることはしないだろうけど、自分は大森聡子が嫌がることをして苦痛に歪む顔が見たい。
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