side K

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大森聡子を見たら、自分の視線と存在に気が付いたみたいにこっちを見た。 さて、さっさと玄関を開けなかった大森聡子にどんなお仕置きを与えてやろうか……。 そんな風に思っていたら、イケメンがしゃしゃり出てきた。 そして、こっちを向いた大森聡子の視線がイケメンへとうつる。 釈然としない思いだ。 「これ、どうぞっ! チョコレートを食べると幸せになるホルモンが出るし恋の特効薬らしいですよ。朝から会いに来ちゃうくらいラブラブだったらいらないかもしれないですけど」 恋の特効薬……。 まさか、さっきどさくさまぎれに言ってしまった知り合いよりも深い関係になる予定って言葉を拾ったのか? だとすると、自分を怪しいヤツだって目で見ていた割に良いヤツじゃないか。 イケメンは何をしてもイケメンってか。 手を振りながら玄関に吸い込まれていくイケメンを名残惜しそうに見つめる大森聡子。 前にチラッと見た商社の男もイケメンだったと思うけど、大森聡子の反応から察するに商社の男のイケメン具合よりもこっちの方が好みなんだな。 案外、商社の男のイケメン具合なんてどうってことないレベルだったりして……。 自分と商社の男なんて、お隣のイケメンを見た後ならば同じぐらいの雑魚具合だったりして……。 いや、やっぱりそれはないか。 序列的には 隣のイケメン>商社の男>自分 だろうし、自分が勝てそうな部分なんて確実に年齢だけだし、それだと勝つというより負けな気がする。 まだ隣の家の玄関をうっとりと眺めている大森聡子にイラついて、大森聡子が持っているチョコレートの入った袋を奪ってやった。 ハッとした顔。 挨拶は先手必勝だろ。 「とりあえず、おはよ」 「……おはようございます……」 消え入りそうなぐらい小さな声で返された挨拶と恥ずかしそうなそぶりに、不覚にも可愛いと思った。 雪だるまみたいな恰好なくせに。 いや、部屋着の上着を脱いでも雪だるまみたいなもんかもしれないけど……。
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