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大森聡子にしては機敏な動きで玄関の方に移動したと思ったらそのまま玄関を閉めようとするから、咄嗟に足を割り込ませた。
最終督促班を舐めてるのか、コイツ。
「いい度胸してんね? お仕置きするよ?」
ついつい心の声が口から漏れたけれども、大森聡子がビクリとした様子にゾクゾクきた。
これは、たまらん。
ちょっと怖い感じだったかと思って次は比較的優しい声を出す。
「開けてよ、何で閉めようとしてる?」
「だ、だ、だって! こんな恰好だし! と、言うワケですから手をはなして足も退けてください!」
「着替えればいいでしょ? 別に覗いたりしないし」
怖がらせた後は優しくして、最後は自分に有利な、でも相手にも利するところで落ち着かせる。
これが交渉ってやつだ。
あっさりと降参した様子の大森聡子。
なかなか素直じゃないか。
ちょっとぐらい抵抗される方が虐めるには楽しいけれども、たまに素直になられるのもたまらない。
自分を締め出すことを諦めたらしい大森聡子にスーパーの袋を出してもらい、キッチンに向かう。
大森聡子は着替えに行ったようだ。
家主がいない状態でいろいろ家探しする趣味はないけれども、冷蔵庫の中ならば昨日、粗方チェックしたのだからいいだろう。
自分に都合よい解釈ばかりを連発して冷蔵庫を開けた。
昨日のまま、大量のお菓子のファミリーパックとポテトチップスをスーパーの袋の中に放り込む。
ゼリーも没収。
冷凍庫を開けてアイスクリームを発見した。
これは後からでいいだろう。
暑い時期ではないけれども、冷たいものはできるだけ冷たい状態にしておくべきだろうし。
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