side K

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大森聡子の住むマンションを出たところで、不意に思い立って名前を呼んでみた。 「聡子」 なかなかいい、と思う。 大森聡子は驚いた様子で自分を見てくる。 普通さ、伝わりそうなもんじゃないか? 休みの日に朝からやってきて、下の名前を呼ばれてみたら。 明らかな好意。 しかも、今から自分の家に連れて行くっていうのに。 鈍くさいのか? 「王子様って自分のこと呼ぶんでしょ? だったら自分も大森さんよりも聡子って呼んだ方が雰囲気出るじゃん?」 「ほら、王子様って呼んでみろよ? ん? なんならご主人様でもいいぞ? そうだ、聡子はプライベートでは俺の専属メイドって設定にでもするか。そしたら逆らえないだろ?」 「おっし、聡子、さっさと隣に来いよ。ついでに袋を片方、持って」 「……はい」 「違うって。かしこまりました王子様。もしくは、かしこまりましたご主人様って言って。ダイエットするって言ってるのに、こんなにお菓子を持ってる聡子には躾が必要だな」 「……かしこまりました、ご主人様」 素直に従う大森聡子。 大丈夫か? こんな簡単に自分に捕獲されて大丈夫なのか? でも、楽しいからいいことにしておこう。
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