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「どうぞ」
玄関を開けられ、中に入れと腕を引っ張られ、出されたスリッパを履いて室内にあがる。
王子班長が屈んだから何事かと思っていたら、玄関で靴を揃えていた……。
意外すぎる。
うちに来たときもそんなことしていたっけ?
って言うかさ、男の人の一人暮らしに見えないくらいスッキリと片付いているんですけど。
普通、靴が2、3足ぐらい出ていてもいいと思うのだけど……。
廊下もピカピカだし。
10年前に買ったんだよね?
こんなにキレイなの?
王子班長に連れられてリビングに……。
我が家とは違って広々としたリビング。
まるでモデルルームみたいに整えられているのですが……。
王子班長に恋焦がれていた頃には思いもよらなかったのに、諦めようと思った途端に王子班長の自宅にあがりこんでるってなんだ。
まだ、好きでいてもいいのかなって思うじゃん。
でも、この人は基本的に私のことを同僚としてしか見てくれない人だし。
ガサガサと奪われたビニル袋。
ふーん。
分譲マンションっていうのは本当に対面式キッチンが多いのか。
キッチンの方へと行ってしまった王子班長の後を追ったのは、1人でリビングに取り残されてもすることがないからだ。
「聡子、腹減ってる?」
王子様専属メイドは私ですよね?
でも、どこからどう見ても王子班長がキッチンに立っておりますが……。
「減ってますけど」
「ご飯とみそ汁なら温めるだけだけど。いつも朝ごはんって何を食べてる?」
「マーガリンのトーストと小倉マーガリンのトーストとサラダとスープとヨーグルトにグラノーラをかけたものです」
「……多いだろ」
「ダイエット中だから減らしましたけど」
「……ふーん。まさかそれを食べた後にデザートとか」
「毎回じゃないですよ! 食べたいときだけ!」
「引っ越してくるか?」
……な、な、なぜ!?
「自分がダイエットに協力してやるって言ったんだから、聡子の食べ物の管理、徹底してやろうか?」
こ、こわいですよ、顔つきがっ!
「遠慮します! もう少し食べる量を減らす努力を致します!!!」
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