side S

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「大森さんが食事に付き合ってくれないとさ、困るじゃん」 今さっき、ダイエットのために台湾ラーメンは食べ納めだと宣言したはずなのに。 そして、私は王子班長への不毛な片思いを葬り去るなり、痩せてもう少し自分に自信がついたら告白してみて玉砕するなり、なんとか自分の中で不毛な恋心を亡き物にして、次の相手を探そうと心密かに決心していたのに。 真っ赤というか、真っ茶色に染まるスープに浮かぶ豚ひき肉をれんげですくいながら、私だってそんな風に言われて困ると思った。 「こうして仕事帰りにラーメン啜って、仕事の愚痴を言ったり聞いたりしてストレス発散してるのに」 王子班長が私を同僚としか見ていないことはよく分かっている。 それが証拠にこの3年間の中で私が知る限り、班長は短い付き合いの女性が2人いたはずだ。 友達の紹介という名の合コンで出会った相手のはず。 その度に、夕飯に誘われる頻度が減り、別れると何事もなかったかのように夕飯に誘われるのだ。 誘われないのも苦しいけれども、別れた相手をいつまでも引きずる王子班長の話を聞くのもけっこう苦しかった。 だけど、それ以上にやっぱり一緒にラーメンを啜ったり定食を食べたりする時間が愛しくて楽しくてついついホイホイとついてきてしまったのだ。 2人きりのときもあれば、他の人も一緒のときもあった。 「聞いてる?」 「……聞いてます」 れんげの中で小さく揺れる油を箸でくっつけて大きくしながら答えた。
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