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ダイエットを決心した人が最初にすることは何だろう? 他の人がどうかは分からないけれども、私は食べ納めをしてからダイエットを開始しようと心に決めた。 これは、私の人生を変えるためのダイエットなのだ。 最後の希望を捨てずに、痩せて今よりも自分に自信をつけて、王子班長に思いを告げて玉砕するなり、それよりも先に他に好きな人を見つけるなり。 とにかく、ダイエットを決行するにあたって、自分の心を強くもつためにも食べ納めの儀式をしようと思った。 今日の夕飯は『居酒屋 名古屋』だ。 サラリーマンのおじさん御用達のこのお店は、店内がすべてカウンター席で大将とおかみさんが2人で切り盛りしている小さなお店で、土手煮が激ウマなのだ。 食べ納めのつもりで心して地下街の『居酒屋 名古屋』の暖簾をくぐった。 「らっしゃい!!」 大将の景気のいい声と店内に溢れるおじさん達のガヤガヤとした喧噪。 それも今日で最後だと心に決めて、大将があっち、空いてるよと目で教えてくれた席に座った。 珍しいことに、若いサラリーマンが右側に、左側は壁だった。 「失礼します……」 相手がおじさんだったら、そんな風に声をかけなかったかもしれないけれども、いつもと勝手が違って一応、声をかけてしまったのだ。 「あっ、はい」 声をかけたお隣のサラリーマンの声や、カウンターに並んでいる彼の注文の品を気持ちそちら側によけた手つきや所作が品が良かった。 ふわっと爽やかな風が通り抜けたような、そんな気がした。
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