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「駄目ですよ、親父さん。克哉は渡しません」
「──えっ……」
い、今……なんておっしゃいました?
「渡さない」って!? 「渡さない」って!?
「よ、よ、陽さん……」
動揺した俺を見て、陽さんがふっ、と優しく笑む。その意味がわからずにいると、男らしい大きな手がそっと頬に触れた。
「米粒ついてるぞ」
たちまち顔が紅潮する。
こんなことでときめく俺は、やっぱり頭がおかしいのか? 変態の仲間入り決定なのか!?
己の取るべきポジションに戸惑い、言葉を失っていると、まったく逆の方に受け取った陽さんが心配そうに首を傾げた。
「あれ? 克哉、うちの店を辞めたいのか?」
あっ、いやいやいや!
「そんなことあるわけないッス! 俺がそんなことを言い出したとすれば、それは俺の姿をした別の生命体です!」
力いっぱい否定すると、陽さんはおかしそうに笑って、それから安堵したように息をついた。
「そうか。安心した」
いつもの無表情さからは想像もつかないような優しい笑顔。なんて魅力的な対比だろう。
このギャップがたまらん……と思う俺は、やっぱり変態なんだろうか?
でも、陽さんだけにしかそう思わないわけだし、世間一般でいう変態とはちょっと違うわけで、この場合はやっぱり……(以下略)
【番外編①おしまい】
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