番外編①:陽一の休日、百瀬の休日

27/27
2095人が本棚に入れています
本棚に追加
/422ページ
「駄目ですよ、親父さん。克哉は渡しません」 「──えっ……」  い、今……なんておっしゃいました?  「渡さない」って!? 「渡さない」って!? 「よ、よ、陽さん……」  動揺した俺を見て、陽さんがふっ、と優しく笑む。その意味がわからずにいると、男らしい大きな手がそっと頬に触れた。 「米粒ついてるぞ」  たちまち顔が紅潮する。 こんなことでときめく俺は、やっぱり頭がおかしいのか? 変態の仲間入り決定なのか!?  己の取るべきポジションに戸惑い、言葉を失っていると、まったく逆の方に受け取った陽さんが心配そうに首を傾げた。 「あれ? 克哉、うちの店を辞めたいのか?」  あっ、いやいやいや! 「そんなことあるわけないッス! 俺がそんなことを言い出したとすれば、それは俺の姿をした別の生命体です!」  力いっぱい否定すると、陽さんはおかしそうに笑って、それから安堵したように息をついた。 「そうか。安心した」  いつもの無表情さからは想像もつかないような優しい笑顔。なんて魅力的な対比だろう。  このギャップがたまらん……と思う俺は、やっぱり変態なんだろうか?   でも、陽さんだけにしかそう思わないわけだし、世間一般でいう変態とはちょっと違うわけで、この場合はやっぱり……(以下略) 【番外編①おしまい】
/422ページ

最初のコメントを投稿しよう!