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「ん?…あぁ、月本か?色んな生徒呼びつけてたむろ場にされても困るからな。佐倉は呼ばないと来ないから心配ない。」
半分本当で半分は嘘だ。佐倉なら意味無く来てもらっても構わない。
けれど、立場上そんな事は言えないから口をつぐむ。
「はい、どーぞ。」
ココアを差し出し机に置くとよそよそしく会釈で返された。
『……どーも。…………ズズッ…甘い…。』
ココアを口にした事で笑みが溢れる姿を見て和やかな気持ちになる。
そして改めてお礼を言う。
「そう言えばジャージありがとな。わざわざ洗ってくれたんだな。」
『あ、はい。…お母さんが。』
ばか正直な所がまたツボにはまる。
「ははは!そりゃそうだな。お母さんに宜しく伝えてよ。」
『はぁ…って言うか、あたしこそありがとうございました。何も言わずに置いてっちゃって。』
「いや?」
それだ。
きっと月本がいたから声を掛けづらく置いたまま出ていったんだろう。
それより俺が気になっているのは……
「……ってか何であの日に来たの?なんか学校に用事でもあった?」
『用事?』
桐生と……
「……誰かと約束してた、とか?」
正門から二人で帰宅していくその後ろ姿が脳裏を霞める。
それなのに……
『ジャージ持って行けば先生に会えるかな…なんて……。』
ボソッと佐倉が答える。
「えっ?」
『あっ!いや…特に用事は無かったんですけど、暇だったからー、そう言えば返そう!みたいなノリで。』
急に早口であたふたと口数が増えた。
今のは聞き間違い、なんかじゃない……よな?
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