No.01-夜風、香ばしさ、ジッポ

前提としてね、ここ、今。

2086年。
日本、東京。
水が少ない。コンクリイトの熱と電子機器の放熱で蜃気楼。
ちょっと、あるいは遠い昔、爆撃されて一回この街はリセットされたんだってな。
東京タワーは木っ端微塵にされた。でもスカイツリーは残ったんだ。
今や電波塔の役割も果たして、廃墟になってるけどな。

原宿はフランスが文化的に重要だとかで保護した。
レトロヨーロピアンネオロリータがひしめきあってる。悪夢みたいな夢の世界だ。
渋谷と新宿は無国籍地帯。行かない方がいい。生腰で行ってみろ、ボコられる。
六本木だけは小綺麗に復活しやがって、人工庭園なんかもあるんだ。入れねえけど。
そんなこんなだから生粋の日本人なんて珍しくて。
浅草吉原のほんの一部の女は生粋の日本人だから「花魁」って呼ばれてそりゃあ高値がつく。

東京のボスは「リトルボーイ」ってやつだ。名前しか知らない。誰も見たこともない。
ただその呼び名のヤツが、東京を仕切っているらしくて、政治も何もなくなったこの国の全てを回しているらしい、と噂だ。

まあ、そんなところ。めんどくせえから説明終了。
ここからが本編ね。