ファーストティータイム

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 ある晴れた日の朝。 「うーん……」  765プロダクションの事務所で、一人の男が両腕を組んで唸っていた。  彼の名は、字文一郎(じもんいちろう)。ここの駆け出しプロデューサーである。 (どういう風に接したらいいのかな……)  彼は現在、二人組のユニット“マジカル”をプロデュースしている。すでに一人とは打ち解けているのだが、もう一人とはまだ話もろくにできていない。 (……引っ込み思案で男が苦手な娘……ゲームなんかじゃよく見るけれど、実際に接するとなると、そうすぐに仲良く、なんていかないか)  現実と恋愛ゲームを一緒にしちゃいけないけれど、と一郎は苦笑する。 「ま、♪なーやんでも、しーかたない♪か」  一郎は自分の頬をバシッと叩く。アイドルが仕事をしやすい環境を作るのが、プロデューサーである自分の務め。今日は彼女とのコミュニケーションに力を入れよう、と、一郎は決心した。
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