ファーストティータイム

3/10
前へ
/10ページ
次へ
 765プロダクションの事務所への入口前で、ため息をついている女の子がいた。 「……や、やっぱり一人だと入りづらいなぁ……春香ちゃん、早く来てくれないかな……」  萩原雪歩がここに着いてから、すでに10分が過ぎている。  いつもなら彼女の友人であり、現在ユニットを組んでいる天海春香と一緒に中に入れるのだが、あいにく、今日はまだ、春香は姿を見せていない。 「ううっ、私一人でプロデューサーの所になんて行けないよ……」  やっぱり無理、と雪歩が入口に背を向けたとき、 「ん?そこにいるのは雪歩か?」 「ひうっ?」  不意に後ろから声をかけられた雪歩は、文字通り飛び上がって驚いた。そして、ゆっくりと振り向くと、 「あ、ごめん……驚かせるつもりはなかったんだ」  扉を開け、申し訳なさそうな顔をした一郎が立っていた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加