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一郎はお盆をテーブルの上に乗せる。
「雪歩は何のお茶がいい?」
「え?」
「色々あるよ。緑茶に煎茶、ほうじ茶、紅茶、ジャスミン茶にハーブティーと、それから……」
次々と茶葉を見せていく一郎。
「えっと……それじゃあ……緑茶をお願いします……」
「よし、じゃあ急須に入れてと……あ、いけない。湯飲みを持ってくるのを忘れたな。ちょっと待ってて」
一郎はそう言って、いったん応接室を出ていく。雪歩はそれを確認すると、再びため息をついた。
(……本当は今日、緑茶を水筒に入れて持ってきたんだけれど……いらないって言ったらプロデューサーに怒られるかも知れないし……ううっ……)
別に一郎は、無理やり飲ませようとしているわけではない。だが、彼女にしてみれば、断って怒られたら……という思いが、どうしても浮かんでしまうのだ。
「お待たせ」
そんなことなど全く知らず、一郎は湯飲みを持って戻ってきた。
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