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それから数分後。先ほどまでのぎこちなさはどこへやら、二人とも落ち着いた様子でお茶を飲んでいた。
「雪歩は家でもお茶を飲んでいるの?」
「はい。毎日欠かさず一杯は飲んでます。特に湯飲みに注ぐときに、こぽこぽ……っていう音を聞くときが幸せなんですぅ」
本当に幸せそうな顔で話す雪歩。
「お茶を飲むだけじゃなくて、その過程まで楽しめるのか……上には上がいるんだな」
一郎は感心しながら、ぐいっとお茶を飲み干し、一息ついた。
「でも、驚きました……プロデューサーがこんなにお茶が好きだなんて……」
「俺だって、雪歩がお茶好きだなんて知らなかったよ。それに……」
「雪歩、俺に嘘をついていたな?」
「えっ?な、何をですか……?」
突然の一郎の言葉に、雪歩はうろたえた。
「男が苦手で引っ込み思案なんて、全然違うじゃないか。もしそうなら、こんなに俺と話なんてできないはずだよ」
「そ、それは……プ、プロデューサーがこんなに話しやすい人だなんて知らなくて……お茶が好きなことも……その……あうぅ……」
急にしどろもどろになる雪歩を見て、一郎は思わず笑ってしまった。
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