第1章

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大通りを、行く当てもなく歩いてみる。 目に入る景色の全てが新鮮で、楽しい。 あっちは?こっちは? ブラブラ、ブラブラと右に左に。 普段の生活でやれば怒られそうだけど、今の私に注意する人間なんていない。 お腹が空いたら、露店の品物を勝手に拝借するし、疲れたら勝手に馬車に乗る。 何をやっても怒られない幸せな世界。 ちょっと、現実に帰るのが嫌になりそう。 そうやって歩き回って、どれくらいの時が流れたのだろう。 何日も経った気がするし、まだ数時間な気もする。 でも、突然に変化が起きた。 「あ~!やっと見つけたわ、時子ちゃん! 探したんだから!」 今まで、人の話し声は幾度となく聞こえたけど、その全てが私以外に対して。 でも、今のは明らかに私に声をかけている。 その方向を見てみれば、遠くから走ってくる人。 それは、周囲の景観からはかなり浮いた存在で。 や、私も浮いてるけどさ。 必死に走ってきたのか、私の前に着いた時には、もう息を荒げるなんてレベルじゃないぐらいに息をきらせていた。 「あ、あの、大丈夫ですか?」 思わず声をかけると、その返事より前に私の手を握られた。
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