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大通りを、行く当てもなく歩いてみる。
目に入る景色の全てが新鮮で、楽しい。
あっちは?こっちは?
ブラブラ、ブラブラと右に左に。
普段の生活でやれば怒られそうだけど、今の私に注意する人間なんていない。
お腹が空いたら、露店の品物を勝手に拝借するし、疲れたら勝手に馬車に乗る。
何をやっても怒られない幸せな世界。
ちょっと、現実に帰るのが嫌になりそう。
そうやって歩き回って、どれくらいの時が流れたのだろう。
何日も経った気がするし、まだ数時間な気もする。
でも、突然に変化が起きた。
「あ~!やっと見つけたわ、時子ちゃん!
探したんだから!」
今まで、人の話し声は幾度となく聞こえたけど、その全てが私以外に対して。
でも、今のは明らかに私に声をかけている。
その方向を見てみれば、遠くから走ってくる人。
それは、周囲の景観からはかなり浮いた存在で。
や、私も浮いてるけどさ。
必死に走ってきたのか、私の前に着いた時には、もう息を荒げるなんてレベルじゃないぐらいに息をきらせていた。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
思わず声をかけると、その返事より前に私の手を握られた。
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