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「ふむ、キミは面白いな」
私を見ての第一声が"面白い"。
でも、不思議と嫌な感じはしない。
「色々と記憶を忘れているようだ。
そのせいで、一番大事なことも忘れている」
大事なこと?
「よければ、私が鍵を作ろう。
キミの記憶の鍵穴にピッタリとあうものを。
それで、キミは大丈夫だ」
記憶の鍵穴……?
「は、い?」
そのまま曖昧に返事をすると、王様はニッコリと微笑んで、再び鍵を作りを始めた。
どこかに行くわけにもいかず、私もそのまま待つ。
どれくらい時間が経ったのか。
まだ高かった日はいつの間にかオレンジ色に染まり、徐々に暗闇が辺りを支配し始める。
「や、暗いのが、恐い」
なぜか分からない。
分からないけど、異常な怖さを感じる。
「やぁ、出来たぞ。
私の改心の作品だ」
出来上がった鍵を高らかに掲げ、私に見せびらかす王様。
けれど、その目はすぐに険しいものになる。
「キミ、早くこちらへ!」
そう言って、有無を言わさずに私は腕を引っ張られ王様に抱き寄せられる。
え、まさかそんな事が?
なんて期待をちょっとしたけど、そのまますぐに解放されて、私は王様の後ろに隠れるように立たされた。
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