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彼女も彼も店に来なくなって、あれから半年。
僕はもう習慣になってしまっているのか、それともあの二人がまた来てくれるのを、一緒にコーヒーを飲んでくれるのを諦めきれていないのか、未だに土曜日にシフトを入れている。
いつの間にか店舗マネージャーにまで昇格した。
今日は綺麗な秋晴れで、チラチラと紅葉しきった葉が窓の外で落ちている。
カランと店のドアが鳴り、そちらを見れば彼女が立っていた。あれから半年経って、栗色の髪が少し伸びてた。
以前のように彼女はホットコーヒーを頼み、あの頃のようにいつもの席に座った。
僕は込み上げる思いを必死に押し込めながら、彼女の元へコーヒーを持って行く。
「お待たせ致しました。」
「ありがとう。」
あの時は聞けなかった彼女の綺麗な声が聞けた。
そして彼女はあの頃のように、トントンと小さな音を出しながら、ブラックのままで、コーヒーを飲んだ。
そして、
「ふぅ。」
遅れて店へやって来て、あの頃のように、彼女と同じようにホットコーヒーを頼んだ彼は、息を零しながら彼女の前にテーブルを挟んでカタリと座る。
「遅い。」
「悪ぃ、渋滞だった。」
そんな変わらない彼の元へ、コーヒーを持って行く。
彼は砂糖をひと匙コーヒーに入れて、カラカラと混ぜて飲んだ。
いや、今日はあの頃と少し違う。
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