ひと匙の砂糖を入れて

＊

「手術は？どうだったの？」

「無事終わったし、もう大丈夫だ。」

「もうアメリカの病院行かなくていいの？」

「あぁ、だから一緒に暮らすか？」

「うんっ！」

言葉が単語だけじゃない、それに彼も彼女も表情が何処か嬉しそうで、彼の方はいつも崩さないその顔を優しい笑顔にしていて、彼女の方は花が咲いたような笑顔をしていた。

「よかった。」

「マネージャーどうしたんすか？」

「ううん、何でも無いよ。」

今日、二人が去った後のカップは、砂糖がひと匙溶けたコーヒーも、何も入っていないコーヒーも、全て飲み干されていた。

それから、また毎週土曜日に二人は店に来るようになる。

それがいつしか日曜日の朝になり、

そして、二人と一緒に小さな女の子がやって来るようになるのは、

更に数年経って、桜が咲き誇る頃、僕がこの店の副店長になった時の事だ。