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「遅い。」 私の目の前に、綺麗に磨かれたテーブルを挟んで座った男に言う。 まず待たせた私に一言謝罪するべきでは無いのか? 何が『ふぅ。』だ。息を漏らしたいのはこっちだ。 「あ?悪ぃな。会議だった。」 「知ってる。」 コイツの『会議だった。』の中には、『会議があったが、それが長引いたから遅くなった。』という意味が隠れていて、毎度の事ながら解りにくいし、言葉足らずだ。 けど、一応謝罪があったので、まあ、いいだろう。 「お待たせ致しました。」 ここの店の店員さんがコイツに私と同じ飲み物を持ってきた。 「お前明日は。」 「明日は空いてるかって事?」 「ん。」 ほらね、言葉足らず。 カップにひと匙の砂糖を入れて、スプーンでかき混ぜる男を呆れ見る。 カラカラカラ 「空いてる。」 そしてスプーンとカップが当たる軽い音を聞きながら、私はそう答えた。
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